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鉄鉱石の高騰。オーストラリア二大巨頭の思惑は?
2008/02/19
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今日はちょっとだけ難しいお話。
昨日、新日本製鉄を初めとする日本・韓国の製鉄業者と、ブラジルのヴァーレ社(Vale)との間で合意された、今年度の鉄鉱石大幅値上げの話題は日本でも騒がれていますね。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/steel_companies/
(Yahoo!ニュース-鉄鋼)
そもそも前年比で65%増という史上二番目の大幅値上げの原因となったのは、近年の中国の急速な経済成長に大きく起因する、世界的な鉄鉱石の需要急増。どのくらいかと言うと、2002年におよそ9億トンだった世界の粗鋼生産は昨年には13.4億トンまで増加し、それでも供給が追いつかないといった状態です。
世界の鉄鉱石市場には、ヴァーレの他にオーストラリアのBHPビリトン(BHP Billiton)とリオ・ティント(Rio Tinto)が三大巨頭として君臨しています。この三社が独占する鉄鋼の世界シェアはおよそ8割。オーストラリアは世界一級の産鉄国なのです。実際に、オーストラリアの鉄鋼石による貿易黒字は日本円にして年間およそ1兆5000億以上。鉄鋼産業は石炭に次いでオーストラリア経済の支柱を担っているのです。
その為、オーストラリアでは建造物にもふんだんに鉄が使われます。高層ビルから街角の小さなショッピングセンターまで、「デザイン」面を担当するのは常に鉄。コンクリート建築が主流の日本からすると贅沢な話ですね。
そんなオーストラリアの二大巨頭、BHPとRioですが、同じ国内に本拠を構えて競っている以上は当たり障りの無い関係とはいきません。昨年からBHPが頻繁にRioに対して買収の話を持ちかけてきました。更に鉄不足に悩む中国のチナルコ(Chinalco)もアメリカ合衆国のアルコア(Alcoa)と合同でRio株の買い占めに参入。BHPの株主達の肝を冷やします。Rioが頑なにオファーの引き上げを主張し続ける中、この買収合戦は日に日に激化。
さて、今回のブラジルと日韓の間に結ばれた新たな鉄鋼市場の価格設定は、この買収合戦にどのような影響を及ぼすのでしょうか・・・?
ブラジルのヴァーレ社がアジアの産鉄業者に対して71%の鉄鉱石取引価格引き上げを取り付けたというニュースは、リオ・ティントにBHPを振り切る望みを与えた。が、結果は予想されたほどのものではなかった。
リオの株価は2.7%値上がり。しかしBHP株もまた、2.6%値上がりした。その為、リオとBHPとの相対的株価は 3.44:1 で、BHPが提案している 3.4:1 のオファーをわずかに上回った状態に留まった。
・・・(中略)・・・
(BHPからの)オファーに対するリオの防衛の鍵は、両グループが所持する鉄鋼生産力の違いである。リオの鉄鋼石の生産力は、現時点では疑いようも無くBHPのそれよりも上だ。(つまり鉄鋼石の分野でBHPに差をつける事が、リオにとって買収話を有利に進められる事に繋がる)
・・・(中略)・・・リオは、鉄鋼生産の独占は市場取引価格を手玉に取れるだけの力となり、計り知れない利益を生むと主張する。ちなみに現在の市場取引価格は、長期契約価格のおよそ倍となっている。(つまり独占が成功すれば理論上は現在の契約価格からその倍の間で自由に価格を操ることが出来る)
・・・(中略)・・・そして、日本と韓国の製鉄業者による65%以上の値上げ合意は、急速に他の製鉄業者へも波紋するだろう。自ずと(産鉄業界の)収益力は上向きとなる。
それに対してBHPは、鉄鉱石でリオに劣る分、マンガンと石炭にかけては見込みがある。その為、BHPは鉱業においてリオよりもエクスポージャーがあると主張する。ちなみに、リオの鉄鋼業による昨年度の売り上げがUS$4000億であるのに対し、BHPのマンガンや石炭による収益はわずか6ヶ月間でUS$2700億であった。
・・・(中略)・・・
現在、BHPはオファーを 3.5~3.75:1程度に引き上げる準備があるとも見られている。
・・・(中略)・・・
リオとしては、このひっ迫した買収合戦から抜け出せない場合 - 鉄鋼石の価格交渉だけが唯一の争点である以上は - BHPからの最終的な価格提示要求に屈する事になるのも時間の問題だ。
2008-Feb-19, Business Spectator - "Pressure mounts on Rio" より
ようは、リオの鉄鋼がBHPの他の鉱業に大きく差をつけ、株価が高騰しない限りは買収は必至だという事ですね。リオがヴァーレの65%値上げは不十分だと主張するのはこの為でもあります。
両社の合併が成立すれば、今まで三つ巴の体制にあった世界の鉄鋼業界のトップがヴァーレと新BHPとの一騎打ちになります。
そうなると、東アジアの鉄鋼の価格はまず間違えなく今以上に上がるでしょう。もう一つ付け加えると、鉄鉱石を加工するのに必要となる主なエネルギー源は石炭です。この石炭、日本では8割以上をオーストラリアに頼っています。
つまり、BHPとRioが合併するという事は石炭においては一社の独占となるのです。もちろん、ここで石炭の価格が吊り上げられるのは確実です。
最終局面を目の前にしたBHPとRioの合併は、成功すれば日本の産業に手痛いダメージとなるのです。
さて、ここでちょっとオーストラリアの経済そのものがどういう推移にあるかを見てみましょう。下は、BHPとRioの株価を、それぞれAll-Ordinaries-Index(XAO:オーストラリア平均株価)と比較したものです(クリックで拡大)。

Australian Securities Exchange - Charting より拝借
昨年8月頃から、中国の鉄鋼の需要が急迫すると共に、好景気真っ只中のオーストラリアの中でも、両社の株価が特に高騰を開始。
9月に入ると、BHPによるRio買収の噂が流れ、BHPの株価が一挙に高騰。その噂が事実だと分かると、翌10月、今度はRioの株価が高騰します。
しかし11月、アメリカのサブ・プライム・モーゲッジ問題が発覚すると、アメリカの投資家を中心に売りが増え、オーストラリアも例に漏れず株価急落。BHPも同じ運命をたどり、Rioもその煽りを受けます。が、その場は見事に立ち直します。
けれども、前年のサブプライム問題からの国際的な余波に加えて、政権交代・金利引き上げ・原油の高騰・極度のインフレ・・・といった国内の不安要素が相互的に作用し、年明けから株価が急降下 - 『魔の2週間』とも言われた下落が始まります。
この下落もさほどの大事に至らず収集がつきましたが、金利引上げの煽りで金融や不動産業界を中心に株価が停滞。経営不審の為、上場停止を受ける企業も現れます。その延長で、オーストラリア四大銀行の一角ANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀)が昨日、多額の不渡りを公表すると共に同社の株価は6.06%も下落。
他にも、干ばつ・水害・原油高による物価の高騰や、それに対する消費者の節約傾向の加速で、昨年から経営危機にあったCentroを初めとする、大手スーパーなどのコンシューマー・ステープルが低迷。
ついにオーストラリアのバブル景気にもブレーキが掛かったという事です。まだこの先がどうなるかは分かりませんが、むしろインフレが手遅れになる前に見事「待った」を掛けたリザーブ・バンクとラッド政権を褒めるべきではないかと、僕は思います。
そんな最中、BHP・Rioの両社の株価は依然として上昇中。中国を中心とした鉄の需要が続く限り、まだ値上がりは終わらないと思います。少なくともこれから金融政策などでどんどんインフレ抑制が成されるであろうオーストラリアの経済全体と比較すれば、鉄鋼産業の株価は相対的には高い水準を保ち続けるでしょう。
日本で最も鉄の需要が多いのが車産業ですが、逆にこれからはかなり苦境を強いられそうですね・・・。反対にオーストラリアにとってはまたとないチャンス。これからインフレ抑制で沈静化していくオーストラリアの景気に、鉱業が強い希望の的となりそうです。
・・・ ・・・ ・・・
ま、僕は専門家じゃないので、実際どうなるかなんて分からないですけど~w
・・・ここまで力説しておいて無責任ですみません(^^;)
いや、でも、頑張りましたよ、マジで書き疲れました(--;)
まあ、あくまで私見という事で、流して下さいな(><)
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今日はちょっとだけ難しいお話。
昨日、新日本製鉄を初めとする日本・韓国の製鉄業者と、ブラジルのヴァーレ社(Vale)との間で合意された、今年度の鉄鉱石大幅値上げの話題は日本でも騒がれていますね。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/steel_companies/
(Yahoo!ニュース-鉄鋼)
そもそも前年比で65%増という史上二番目の大幅値上げの原因となったのは、近年の中国の急速な経済成長に大きく起因する、世界的な鉄鉱石の需要急増。どのくらいかと言うと、2002年におよそ9億トンだった世界の粗鋼生産は昨年には13.4億トンまで増加し、それでも供給が追いつかないといった状態です。
世界の鉄鉱石市場には、ヴァーレの他にオーストラリアのBHPビリトン(BHP Billiton)とリオ・ティント(Rio Tinto)が三大巨頭として君臨しています。この三社が独占する鉄鋼の世界シェアはおよそ8割。オーストラリアは世界一級の産鉄国なのです。実際に、オーストラリアの鉄鋼石による貿易黒字は日本円にして年間およそ1兆5000億以上。鉄鋼産業は石炭に次いでオーストラリア経済の支柱を担っているのです。
その為、オーストラリアでは建造物にもふんだんに鉄が使われます。高層ビルから街角の小さなショッピングセンターまで、「デザイン」面を担当するのは常に鉄。コンクリート建築が主流の日本からすると贅沢な話ですね。
そんなオーストラリアの二大巨頭、BHPとRioですが、同じ国内に本拠を構えて競っている以上は当たり障りの無い関係とはいきません。昨年からBHPが頻繁にRioに対して買収の話を持ちかけてきました。更に鉄不足に悩む中国のチナルコ(Chinalco)もアメリカ合衆国のアルコア(Alcoa)と合同でRio株の買い占めに参入。BHPの株主達の肝を冷やします。Rioが頑なにオファーの引き上げを主張し続ける中、この買収合戦は日に日に激化。
さて、今回のブラジルと日韓の間に結ばれた新たな鉄鋼市場の価格設定は、この買収合戦にどのような影響を及ぼすのでしょうか・・・?
リオにプレッシャーが圧し掛かる
ブラジルのヴァーレ社がアジアの産鉄業者に対して71%の鉄鉱石取引価格引き上げを取り付けたというニュースは、リオ・ティントにBHPを振り切る望みを与えた。が、結果は予想されたほどのものではなかった。
リオの株価は2.7%値上がり。しかしBHP株もまた、2.6%値上がりした。その為、リオとBHPとの相対的株価は 3.44:1 で、BHPが提案している 3.4:1 のオファーをわずかに上回った状態に留まった。
・・・(中略)・・・
(BHPからの)オファーに対するリオの防衛の鍵は、両グループが所持する鉄鋼生産力の違いである。リオの鉄鋼石の生産力は、現時点では疑いようも無くBHPのそれよりも上だ。(つまり鉄鋼石の分野でBHPに差をつける事が、リオにとって買収話を有利に進められる事に繋がる)
・・・(中略)・・・リオは、鉄鋼生産の独占は市場取引価格を手玉に取れるだけの力となり、計り知れない利益を生むと主張する。ちなみに現在の市場取引価格は、長期契約価格のおよそ倍となっている。(つまり独占が成功すれば理論上は現在の契約価格からその倍の間で自由に価格を操ることが出来る)
・・・(中略)・・・そして、日本と韓国の製鉄業者による65%以上の値上げ合意は、急速に他の製鉄業者へも波紋するだろう。自ずと(産鉄業界の)収益力は上向きとなる。
それに対してBHPは、鉄鉱石でリオに劣る分、マンガンと石炭にかけては見込みがある。その為、BHPは鉱業においてリオよりもエクスポージャーがあると主張する。ちなみに、リオの鉄鋼業による昨年度の売り上げがUS$4000億であるのに対し、BHPのマンガンや石炭による収益はわずか6ヶ月間でUS$2700億であった。
・・・(中略)・・・
現在、BHPはオファーを 3.5~3.75:1程度に引き上げる準備があるとも見られている。
・・・(中略)・・・
リオとしては、このひっ迫した買収合戦から抜け出せない場合 - 鉄鋼石の価格交渉だけが唯一の争点である以上は - BHPからの最終的な価格提示要求に屈する事になるのも時間の問題だ。
2008-Feb-19, Business Spectator - "Pressure mounts on Rio" より
ようは、リオの鉄鋼がBHPの他の鉱業に大きく差をつけ、株価が高騰しない限りは買収は必至だという事ですね。リオがヴァーレの65%値上げは不十分だと主張するのはこの為でもあります。
両社の合併が成立すれば、今まで三つ巴の体制にあった世界の鉄鋼業界のトップがヴァーレと新BHPとの一騎打ちになります。
そうなると、東アジアの鉄鋼の価格はまず間違えなく今以上に上がるでしょう。もう一つ付け加えると、鉄鉱石を加工するのに必要となる主なエネルギー源は石炭です。この石炭、日本では8割以上をオーストラリアに頼っています。
つまり、BHPとRioが合併するという事は石炭においては一社の独占となるのです。もちろん、ここで石炭の価格が吊り上げられるのは確実です。
最終局面を目の前にしたBHPとRioの合併は、成功すれば日本の産業に手痛いダメージとなるのです。
さて、ここでちょっとオーストラリアの経済そのものがどういう推移にあるかを見てみましょう。下は、BHPとRioの株価を、それぞれAll-Ordinaries-Index(XAO:オーストラリア平均株価)と比較したものです(クリックで拡大)。


Australian Securities Exchange - Charting より拝借
昨年8月頃から、中国の鉄鋼の需要が急迫すると共に、好景気真っ只中のオーストラリアの中でも、両社の株価が特に高騰を開始。
9月に入ると、BHPによるRio買収の噂が流れ、BHPの株価が一挙に高騰。その噂が事実だと分かると、翌10月、今度はRioの株価が高騰します。
しかし11月、アメリカのサブ・プライム・モーゲッジ問題が発覚すると、アメリカの投資家を中心に売りが増え、オーストラリアも例に漏れず株価急落。BHPも同じ運命をたどり、Rioもその煽りを受けます。が、その場は見事に立ち直します。
けれども、前年のサブプライム問題からの国際的な余波に加えて、政権交代・金利引き上げ・原油の高騰・極度のインフレ・・・といった国内の不安要素が相互的に作用し、年明けから株価が急降下 - 『魔の2週間』とも言われた下落が始まります。
この下落もさほどの大事に至らず収集がつきましたが、金利引上げの煽りで金融や不動産業界を中心に株価が停滞。経営不審の為、上場停止を受ける企業も現れます。その延長で、オーストラリア四大銀行の一角ANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀)が昨日、多額の不渡りを公表すると共に同社の株価は6.06%も下落。
他にも、干ばつ・水害・原油高による物価の高騰や、それに対する消費者の節約傾向の加速で、昨年から経営危機にあったCentroを初めとする、大手スーパーなどのコンシューマー・ステープルが低迷。
ついにオーストラリアのバブル景気にもブレーキが掛かったという事です。まだこの先がどうなるかは分かりませんが、むしろインフレが手遅れになる前に見事「待った」を掛けたリザーブ・バンクとラッド政権を褒めるべきではないかと、僕は思います。
そんな最中、BHP・Rioの両社の株価は依然として上昇中。中国を中心とした鉄の需要が続く限り、まだ値上がりは終わらないと思います。少なくともこれから金融政策などでどんどんインフレ抑制が成されるであろうオーストラリアの経済全体と比較すれば、鉄鋼産業の株価は相対的には高い水準を保ち続けるでしょう。
日本で最も鉄の需要が多いのが車産業ですが、逆にこれからはかなり苦境を強いられそうですね・・・。反対にオーストラリアにとってはまたとないチャンス。これからインフレ抑制で沈静化していくオーストラリアの景気に、鉱業が強い希望の的となりそうです。
・・・ ・・・ ・・・
ま、僕は専門家じゃないので、実際どうなるかなんて分からないですけど~w
・・・ここまで力説しておいて無責任ですみません(^^;)
いや、でも、頑張りましたよ、マジで書き疲れました(--;)
まあ、あくまで私見という事で、流して下さいな(><)
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コメント
素晴らしい記事でした
ありがとうございます!
そう言って頂けると、無理して書いた甲斐がありました(TT)
BHPとリオの話は良く新聞で見かけていたので自信はあったのですが、
日本の事情が全く分からなかったので苦戦しました!
また面白い経済の記事があったら、頑張って翻訳します!!
BHPとリオの話は良く新聞で見かけていたので自信はあったのですが、
日本の事情が全く分からなかったので苦戦しました!
また面白い経済の記事があったら、頑張って翻訳します!!
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